肛門外科について

肛門について

痔は出産や便秘が原因で引き起こされることもあり、老若男女を問わず多くの方が患う病気です。症状が軽ければ軽いほど簡単な処置で改善します。そのためいち早くつらい痛みを緩和し、負担の少ない治療をするためにも、悪化しないうちにご来院していただくことが大切です。

痔の治療で肛門外科へ行くと外科手術が必要になると思われる方もいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。いぼ痔の場合、実際に手術が必要な患者さまは全体の10~20%ほどです。

当院では患者さまのお気持ちに配慮しながら、診療を実施していきますので、異常を感じたらお気軽にご来院下さい。少しでも安心してご来院いただき、1日でも早く治療に取り組めるよう、以下で当院の診察の流れや治療内容について簡単にご説明します。

肛門外科診療について

1.問診

問診まずは患者さまにお話をお伺いします。具体的な症状や日頃の生活習慣、現在の排便の様子などについてお尋ねします。

2.診察・検査

まずは視診

目でおしりの状態を確認いたします。横向きに寝て頂きますが、痔の診察で脚を大きく開いたり、服を全て脱いだりすることはありません。

次に触診、指診

触診や・指診はゴム製の手袋を用いて行います。痔核の有無のほかにも、膿が溜まっていないか、がんのようものがないか、肛門が狭くないかといったことを確認することが可能です。この際、ゼリー状の麻酔薬を塗るなど、痛みを最小限に抑えるための工夫をしております。

肛門鏡による診察

場合によっては状態をより詳細に調べるために、肛門鏡という簡単な内視鏡を使用するケースもあります。

3、治療の説明

治療の説明患者さまの症状やご要望を踏まえて治療方法をご提案し、しっかりとその内容についてご説明いたします。また、患者さまの痔の原因を探り、生活習慣改善のためのアドバイスなども差し上げます。痔はある程度未然に防ぐことができる病気ですので、普段の生活習慣などに配慮することがとても大切です。

肛門外科の主な疾患

肛門科の主な疾患大腸や肛門の病気の代表的な疾患などを簡単にご紹介します。痔や大腸の病気を疑われたときは、お早めの受診をおすすめいたします。ぜひ当院へお気軽にご相談ください。

排便時の出血

真っ赤な血が垂れる

内痔核

赤黒い出血

大腸がん、虚血性大腸炎、憩室からの出血

便表面に血液が付着

大腸ポリープ、大腸癌

粘液と血液が混じる(粘血便)

潰瘍性大腸炎、クローン病

トイレットペーパーに真っ赤な血が付着

裂肛、内外痔核

肛門部の痛み

排便時の痛み

裂肛、外痔核

常時の痛み

血栓性外痔核(肛門部に硬結)、肛門周囲膿瘍(肛門部に熱感)、内外痔核に炎症を伴ったとき

激しい痛み

内痔核かん頓

肛門からの脱出する組織

柔らかい

内痔核、皮垂

硬い

肛門ポリープ、血栓性外痔核

大きく出る

内痔核かん頓(痛みあり)、直腸脱(無痛)

下着の汚れ

粘液や便が付着

内痔核脱肛

膿の付着

痔瘻

血栓性外痔核

血栓性外痔核は肛門にある外痔核の血流が悪くなってできた血豆です。一時的にでも肛門に急激な負担がかかったことで起こり、長時間座っていたり、排便時に強くいきんだり、おしりが冷えてしまったことなどが原因になります。イボ状の突起ができ、ほとんどの場合、痛みがありますがその程度は様々です。

誰にでも突然起こりうる病気で、生活習慣とも密接に関係していますので、予防などに努めましょう。激しいスポーツや長時間同じ姿勢を避ける、毎日浴槽に浸かって入浴することなどで予防法としてあげられます。

直腸脱

肛門の周りにある筋肉の機能が低下することでる直腸の粘膜や直腸壁が直腸が肛門から飛び出してくる疾患です。患者さまの9割以上が70~80代の女性で、脱出する腸の長さは、長い場合10~20cmも垂れ下がることもあります。初期には痛みなどの症状がなく、下着が汚れやすい程度で受診が遅れるケースもよくあります。 重度に進行すると強い痛みが生じて、下着にこすれて出血や感染を起こす可能性もあります。

また、かんとん(嵌頓)直腸脱という脱出した直腸が大きく腫れ、戻らなくなってしまう状態になることもあります。検査では肛門内圧検査、排便造影検査、怒責診断、骨盤MRI、大腸がんと見分ける大腸内視鏡検査などを行って、肛門括約筋の収縮力の低下などもしっかり確認します。いぼ痔と紛らわしい症状がある場合もあるため、脱出しているものを見ることが一番確実な診断になり、そうしたケースでは腹圧をかけて脱出させて診断することもあります。
多くは排便時のいきみが原因で肛門から腸が直接脱出します。便秘などで長時間、強くいきむ習慣があると直腸脱になりやすく、食生活に気を付けるなど生活習慣を改善しましょう。割合としては多くありませんが、S字結腸の長さや直腸の角度なども直腸脱のなりやすさに関係していることもあり、若い男性なども患うこともあります。また、稀に肛門括約筋や肛門挙筋などの筋肉の発育不全で小児がなることもあります。

直腸脱の治療

直腸脱の治療では手術による外科治療が最も有効です。経肛門的手術と経腹的手術があり、それぞれ肛門側から行うものとおなか側から行う方法です。症状の程度、全身の健康状態なども踏まえて、患者さまにより適した治療方法を選択します。手術の有効性や再発率などを考慮した上で治療方針を決めていくことがポイントです。

直腸脱の患者さまは肛門括約筋などが加齢によって弱っている高齢者の方が多くを占めているため、全身麻酔がかけられないことも多くありますが、脱腸の症状の程度が比較的軽い場合は、腰椎麻酔や局所麻酔で行うことができます。高齢者にとっても比較的安全な手術です。また、脱出の程度が重度のケース、5センチ以上の脱出が見られる場合には全身麻酔をかけて、開腹しておなかの方から直腸を引っ張り上げるという治療を実施します。この治療方法は腹腔鏡を用いることで、より侵襲性の低い手術でも行うことができます。

経肛門的手術

経肛門的手術には、脱出している直腸の粘膜を剥がし、筋肉を縫い縮めて脱出を解消するデロルメ法と、脱出した直腸の表面粘膜をつまんで吊り上げ、糸を通して縛ることで脱出を解消する三輪-Gant法があります。

経腹的手術

経肛門的手術よりも再発率が低い治療方法です。特殊な医療用メッシュを使って腰の骨に固定して、おなかの側から直腸を引っ張り上げる治療になります。もともとの全身の状態があまりよくない患者さまも多いことから、腹腔鏡下による、より体への負担が少ない手術法が普及してきています。

手術後のトレーニング

手術をお受けいただければ、肛門括約筋のはたらきはある程度改善するケースがほとんどです。しかし、直腸脱の再発を防ぐために、手術後には肛門括約筋を鍛える筋力トレーニングなどを行ない、その機能を強化していくことをおすすめしております。

再発

特に肛門括約筋などが加齢によって衰えている高齢の場合、手術を受けて脱出した直腸を戻しても再発してしまう可能性もあります。手術方法などにより再発率は違ってきますので、治療法や再発リスクについて、医師と相談しながらしっかりと理解を深め、納得のいく治療方法を選択するようにしましょう。

肛門掻痒症

肛門掻痒症は、肛門のかゆみの症状の総称です。かきむしることで肛門周囲炎という状態に進行してしまいます。湿気や便の拭き残しなどから引き起こされることもありますが、特に原因もなくかゆみが起こることもあります。

肛門周囲炎

肛門の周囲に生じた皮膚炎のことを肛門周囲炎と呼びます。この状態を長く放置してしまうことで、真菌(カビ)が検出されるケースや、眠っているときでも目が覚めてしまうほどの強い痛痒さが引き起こされることもあります。

肛門周囲膿瘍

痔ろうの初期の症状である肛門周囲膿瘍ですが、進行してしまうと、どんどん膿のたまりが広がっていってしまうことから、放置せずに早めに膿を出すことが大切です。膿のたまりが悪化すると、激痛のためにまともに座ることもできない状態になってしまったり、38度以上の高熱が現れたりすることもあります。

治療では麻酔をかけて切開し、たまった膿を出しきることで痛みなどの症状は劇的に解消されます。ただ、手術後には痔ろうができてしまいますので、そのまま痔ろうの根本的な治療に取り組んでいくというケースがほとんどです。

単純性ヘルペス

ヘルペスウィルスの感染が原因となって引き起こされる病気で、疲労などによって身体の免疫力が落ちているときに感染すると、肛門周囲に水泡が多数できて、強い痛みを伴います。性感染症として生じることもあります。

膿皮症

成人男性の臀部に起こることがほとんどで、皮下膿瘍などの症状が現れます。汗腺という汗を出す器官が細菌に感染してしまうことで生じる病気です。おしりにできたおできのような腫れが痛みを引き起こします。この皮下膿瘍は自然に破れ、膿が出ると症状は改善されます。しかし、あくまでも一時的な沈静化にすぎず、放置して繰り返し再発することで皮膚が黒ずんでいく色素沈着が生じて、広がっていってしまいます。

直腸瘤

腸と膣の間の壁が弱体化することで、便秘や排便の際に息む際に便がひっかかる感じ、直腸が膣側に膨れでしまうといった症状が引き起こされます。直腸膣壁弛緩症と呼ばれることもあります。

毛巣洞

尾底骨周囲に毛髪を包んだ膿のたまりを作る病気です。毛が皮膚の下に潜り込んでしまって、そこで細菌が繁殖するというメカニズムで起こります。傾向として、毛深い男性に起こりやすい病気です。

乳児痔ろう

病名通り、乳児に起こる痔ろうのことです。成長するにしたがって自然に治癒していくことが多くありますが、中学生以降も完治することがないようなら手術を実施します。成長するまでは、腫れなどの症状が現れたときに切開する簡単な外科的な処置で対応します。